投稿日:2026年10月14日
更新日:2026年10月14日

このコラムの目次
クリニックの開業場所は、診療科目やターゲット層に適した立地を選び、診療圏調査を実施して決定します。立地の選定を誤ると集患に直結し、開業後に移転するのも容易ではありません。本記事では、診療科目別の適した立地や医療モールなど形態別の特徴から、失敗しない選び方や物件内見時の注意点まで整理します。
この記事の要約

クリニックを開業する際、場所選びは初期段階に行う重要なプロセスであり、経営の安定を左右する要素の一つです。集患力と移転の困難さの観点から整理します。
クリニックの患者数は、周辺住民からの認知のされやすさや、生活動線上の通いやすさに大きく左右されます。通りに面していて視認性が高い場所や、日常的な買い物のついでに立ち寄れる立地は、自然と地域住民の目に留まります。質の高い医療を提供していても、患者がアクセスしにくい場所では安定した集患は見込めない傾向があります。ただし、現在の立地選定においては制度上の制約も考慮しなければなりません。東京などの大都市圏や人気エリアは「外来医師過多区域」に指定され開業規制が設けられています。2026年4月より、外来医師過多区域でのクリニック開業には、事前届出と地域医療への貢献が明確に求められています。
【関連記事】クリニックの開業規制のポイントは?2026年施行の対策を解説|医院・クリニックの開業支援-スギ薬局グループDCPソリューション
クリニックは、一度開業すると別の場所へ移転するのが容易ではありません。移転には新たな物件の取得費用や内装工事費などの多額の資金がかかり、保健所への届け出など行政手続きも再度必要になります。さらに、移転先の距離によっては既存の患者が通えなくなり、患者層を一から開拓し直す事態にもつながります。また、注意が必要なのが、保険医療機関としての指定手続き(遡及指定)です。「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて」において、事前相談不要でスムーズに遡及指定が認められる至近距離への移転は「同一都道府県内における直線距離で2km以内(開設者に変更がない場合に限る)」と定められています。2kmを超える移転でも事前に厚生局へ届出を行うことで認められるケースはありますが、手続きの空白を作らず、患者さんに継続して通っていただくためには、2km以内での場所探しが最も確実な選択肢となります。

最適な開業場所は、どのような疾患の患者を診るかによって大きく変わります。診療科目ごとのターゲット層と適した立地を整理します。
| 診療科目 | 適した立地の特徴 |
|---|---|
| 皮膚科・眼科 | 通勤・通学客がアクセスしやすい駅周辺の商業地 |
| 整形外科 | 高齢者や痛みを抱える患者が車で通いやすい広い駐車場がある場所 |
皮膚科や眼科、あるいは心療内科などは、通勤や通学の途中に立ち寄りやすい駅周辺の立地が向いています。これらの科目は、広域から特定の症状に悩む患者が訪れることが多く、駅からのアクセスの良さが集患の鍵を握ります。また、若い世代やビジネスパーソンをターゲットとする美容皮膚科なども、ターミナル駅周辺などの利便性が高い場所が有利に働きます。
歩行に不安を抱える高齢者やケガをした患者が多く訪れる整形外科は、車でのアクセスを前提とした駐車場の広さが求められます。広大な敷地を確保しやすい郊外の幹線道路沿いや、大規模な駐車場を備えた商業施設に併設する形などが有力な候補に挙がります。リハビリテーション施設を併設する場合は、より広いスペースが求められるため、敷地面積の確保が重要になります。
開業する場所の形態には、大きく分けて医療モール、テナント、戸建ての3種類があります。それぞれの形態が持つメリットを整理します。
| 立地の形態 | メリット |
|---|---|
| 医療モール | 他の医療機関との相乗効果で集患しやすく認知度が高い |
| テナント | 内装工事のみで済むため初期費用を抑えやすい |
| 戸建て | 敷地や建物の形状を自院のコンセプトに合わせて自由に設計できる |
複数のクリニックが集まる医療モールは、開業当初から地域住民に医療機関として認知されやすい環境が整っています。内科を受診した患者が、同じ建物内の眼科や皮膚科も利用するといった相乗効果が期待できます。また、駐車場や駐輪場、エレベーターなどの共有設備を他のクリニックと共同で利用できるため、患者の利便性を高めつつ自院の負担を軽減する形になります。
既存のビルやマンションの一部を借りるテナント開業は、建物をゼロから建てる戸建てに比べて初期費用を大幅に抑えられます。外構工事が不要で、内装のレイアウト変更や医療機器の搬入に注力できるため、開業準備の負担が軽くなる傾向があります。ただし駅前などの一等地では賃料が高額になりやすく、事業収支を圧迫するリスクがあるため、居抜き物件の活用や条件交渉によって現実的な賃料水準に抑える工夫が重要です。
土地を取得または借地して建物を新築する戸建て開業は、市街化調整区域など用途制限によってクリニックが建てられない場合がある点に注意が必要ですが、自院の理想とする設計を柔軟に反映しやすくなります。感染症対策のための動線分離や、大型の医療機器を設置するための床の補強など、医療に特化した設計を自由に取り入れられます。また、将来的に自らの資産となる点や、建物の外観自体をクリニックの看板としてデザインできる点も魅力です。
開業形態にはメリットがある一方で、それぞれ注意すべきデメリットも存在します。各形態のマイナス面を整理します。
| 立地の形態 | デメリット |
|---|---|
| 医療モール | 診療時間や休診日の設定などに独自の制約が生じやすい |
| テナント | 看板の設置場所や面積に制限があり、認知を広げにくい場合がある |
| 戸建て | 土地探しから建築工事までを行うため、開業までに多大な時間と費用がかかる |
医療モールでの開業は、施設全体の管理規則に従う必要があるため、クリニック単独での自由な意思決定が制限されることがあります。例えば、モールの閉館時間に合わせて診療時間を短く設定せざるを得ないケースや、休診日を他のクリニックと合わせなければならない事態が起こり得ます。また、共同の家賃や管理費が通常のテナントより割高に設定されている傾向も見られます。
ビル内に入居するテナント開業では、建物の外観に関する規約や自治体の条例等により、希望通りの看板を出せないケースが多く存在します。看板のサイズや設置場所が厳しく制限されると、大通りを歩く人や車からクリニックの存在に気付いてもらいにくくなります。2階以上のフロアに入居する場合は特に視認性が下がるため、Webマーケティングなど別の集客手段を手厚く講じる必要があります。
戸建て開業は、条件に合う土地探しから始まり、建物の設計や建築工事を経るため、実際に開業するまでに1年半から2年程度の長い期間を要します。建築資材の高騰などの影響を受けやすく、想定以上に初期費用が膨らむリスクも抱えています。また、将来的に閉院することになった場合、特殊な医療仕様の建物は用途変更が難しく、売却や賃貸に出しにくい側面も考慮に値します。

条件に合う開業場所を見つけるためには、事前の綿密な分析と戦略が重要です。物件探しを本格化させる前に踏むべき手順を整理します。
| 手順 | 具体的な行動 |
|---|---|
| コンセプトの策定 | どのような患者にどのような医療を提供するかを明確化する |
| 競合の調査 | 候補エリアにある既存クリニックの診療科目や評判を確認する |
| 診療圏調査の実施 | エリア内の昼夜人口や年齢層から見込み患者数を算出する |
開業場所を探す前に、まずは自院がターゲットとする患者層と、提供する医療のコンセプトを明確に定めます。働く世代に向けた予防医療に注力するのか、高齢者の慢性疾患に寄り添うのかによって、選ぶべき立地は正反対になります。コンセプトが曖昧なまま物件の広さや賃料だけで決めてしまうと、開業後に提供したい医療と患者のニーズにズレが生じる原因となります。
候補となるエリアが見つかったら、周辺にある競合クリニックの状況を徹底的に調べます。同じ診療科目のクリニックがどの程度の距離にあり、どのような設備や特徴を持っているのかを把握することが重要です。競合が多数存在していても、自院が強みとする専門外来が周辺になければ差別化を図れる可能性があります。逆に競合が少なくても、地域の中心的な大病院が患者を独占しているケースもあります。
感覚や経験則に頼るのではなく、客観的なデータに基づいた診療圏調査を実施します。クリニックを中心とした一定の半径内に居住する人口動態や年齢層、昼夜の人口差などを分析し、1日あたりにどれだけの患者数が来院するかを推計します。精緻な調査結果は開業場所の決定打となるだけでなく、金融機関から融資を受ける際の事業計画書の根拠としても機能します。DCPソリューションでは、スギ薬局の会員情報等を統計化した独自のデータや診療圏調査を提供しています。
候補となる物件を実際に見学する際は、不動産としての価値だけでなく、医療機関として機能するかを見極める必要があります。内見時の確認ポイントを整理します。
| 確認項目 | 判断基準 |
|---|---|
| 患者の動線 | 駅からの道のりや入り口の段差など、通院のストレスがないか |
| 搬入経路 | レントゲンやCTなどの大型医療機器が通路やエレベーターを通るか |
| インフラ設備 | 医療機器を稼働させる電気容量や、十分な水回りの配管があるか |
物件を訪れる際は、ターゲットとなる患者の視点に立って通いやすい生活動線であるかを確認します。最寄り駅からの道順が分かりやすいか、夜間でも街灯があり安全か、ベビーカーや車椅子を利用する患者がスムーズに入室できるバリアフリー構造かなどをチェックします。地図上では駅に近くても、急な坂道や踏切がある場合は心理的な通院のハードルが高くなる傾向があります。
レントゲンやエコー、CTといった大型の医療機器を導入する場合、物件内までの搬入経路が確保されているかを見極めます。入り口のドアの幅や天井の高さ、通路の曲がり角などを確認し、機器が引っかからずに搬入できるかを事前に採寸します。テナントビルの場合は、エレベーターの扉の大きさや耐荷重制限によって搬入が断念されるケースもあるため、細心の注意を払う領域です。
クリニックでは多くの医療機器を同時に稼働させるため、物件の電気容量や水回りの設備が要件を満たしているかを確認します。特に古いテナント物件では全体のアンペア数が不足しており、追加の引き込み工事に多額の費用がかかるケースも珍しくありません。また、手洗い場やトイレの増設が必要な場合、配管経路を確保できる構造であるかどうかも、内装工事の費用を左右する重要な判断材料となります。
診療圏調査や競合分析、条件に合う物件探しを、日常診療を続けながら独力で並行するのは、時間と専門知識の両面で負担が大きくなりがちです。不動産と医療経営の双方にまたがる判断が必要な場面では、開業支援会社のサポートを取り入れる方法も選択肢になります。自力で進める範囲と専門家に任せる範囲を切り分けることで、開業準備の精度とスピードを両立しやすくなります。
診療圏調査は、人口動態や年齢層、昼夜人口差といったデータの収集と分析に専門的な知見を要します。開業支援会社や専門のコンサルタントに依頼すれば、こうしたデータに基づく綿密な調査を通じて、見込み患者数の推計や開業エリアの妥当性を客観的に検証できます。自力では判断が難しい部分を専門家が補うことで、立地選定の精度を高めやすくなります。
条件に合う物件を個人で探し続けるには限界があり、好条件の区画ほど早期に埋まる傾向があります。開業支援会社や医療専門の不動産サービスを活用すると、エリアや診療科目、開業形態の希望に合わせた物件提案を受けやすくなります。市場に出回りにくい情報も含めて相談できるため、立地選定の選択肢を広げながら、自院のコンセプトに合った環境を見極めやすくなります。
クリニック開業における場所選びは、診療科目やコンセプトに合わせた立地の選定と、客観的なデータに基づく診療圏調査の組み合わせで判断する作業です。医療モール、テナント、戸建てといった形態ごとに異なる認知度やコストのメリット・デメリットを比較し、自院が目指す医療を提供できる最適な環境を見極める必要があります。
ただし、日常診療を続けながらこれらを独力で進めるには、時間と専門知識の両面で負担が生じやすい点にも留意が必要です。
DCPソリューションでは、医療モール・テナント・戸建て開業の企画・運営から物件・土地紹介、診療圏調査まで、クリニック開業をトータルでサポートしています。地域の医療ニーズと先生方のビジョンをすり合わせた物件提案とデータに基づく経営支援により、開業前の不安を払拭し、安定したクリニック経営の実現に貢献します。開業エリアの選定や物件探し、診療圏調査にお悩みの際は、まずは無料相談をご利用ください。ご希望の条件に沿った物件情報のご紹介から、開業までの具体的なステップのご案内まで対応いたします。