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開業までのプロセス

医療モールでの開業は成功しやすい?メリット・デメリットと物件選びの正解

医療モール表紙画像

 

先生は今、ご自身のクリニックを開業する場所について、「本当にここで
良いのだろうか」と悩みながら情報収集をされているのではない
でしょうか。特に、複数のクリニックが集まる「医療モール」は、
集患面での安心感がある一方で、人間関係やコスト面での不安も耳に
することがあるかもしれません。

この記事では、多くの開業医の先生が検討される「医療モール」に
ついて、その仕組みからメリット・デメリット、そして後悔しない
ための物件選びのポイントを解説します。医療経営の視点から、
綺麗事だけでなくリスクも含めてお伝えしますので、先生の理想と
する開業スタイルに適しているかどうかの判断材料としてお役立て
ください。

読み終える頃には、医療モールという選択肢がご自身にとって
「正解」かどうかが明確になり、次に見るべき物件の条件が整理
されているはずです。

 

医療モールとはどのような開業形態なのか?

 

医療モールとは、一つの建物や敷地内に複数の診療科のクリニックと
調剤薬局が集まって運営される医療施設の総称です。

患者さんにとっては「あそこに行けば複数の病気を一度に診てもらえ
る」という利便性があり、医師にとっては「集患や連携がしやすい」と
いう特徴があります。

まずはこの形態が持つ基本的な性質と、なぜ近年増えているのかについ
て整理します。

 

複数のクリニックと薬局が連携する「医療のデパート」

医療モールは、内科、整形外科、眼科、耳鼻科など、異なる専門科目の
クリニックが集合し、共通の調剤薬局を利用する構造になっています。
弊社が取り組む医療モール物件では、薬局が中心となっていることで、
開業後の医療機関との連携を取りやすくするなどの取り組みも可能です。
これは商業施設におけるデパートやショッピングモールと同じ考え方で
あり、単独では集客(集患)が難しい場合でも、集合体となることで
地域内での認知度を強力に高める効果があります。

患者さんの行動心理としても、体調が悪いときに複数の場所を移動する
のは負担が大きいため、一箇所で診察から薬の受け取りまで完結する
医療モールは選ばれやすい傾向にあります。

日本国内における医療モールの数は増加傾向にあり、地域包括ケア
システムの観点からも、かかりつけ医機能を集約した拠点として行政や
地域住民からの期待が高まっています。

 

単独開業よりも廃業リスクを抑えやすい

開業における最大のリスクは、開業直後に患者さんが来ないことによる
資金ショートです。医療モールの場合、すでに認知されている施設内で
の開業や、他のクリニックと同時にオープンすることで、ゼロからの
スタートである単独開業(戸建てや単独ビル)に比べて地域への認知
スピードが格段に速くなります。

以下の表は、一般的な単独開業と医療モール開業の特徴を比較したもの
です。

比較項目 単独開業(戸建て・ビル) 医療モール開業
認知
スピード
遅い(独自に広告宣伝が必要) 早い(モール全体の集客力を活用)
初期投資 高くなりやすい(内装・建築全額負担) 比較的抑えやすい(インフラ共有)
連携体制 自ら近隣医を開拓する必要あり 隣接クリニックと即座に連携可能
自由度 高い(デザイン・診療時間など自由) 制限あり(モールの規定に従う)
経営
リスク
孤立しやすい 相談相手や相互送客が期待できる

このように、医療モールは「経営の安定化」という面で大きな
アドバンテージを持っています。特に経営やマーケティングに不慣れな
開業当初において、この安定性は医師の精神的な負担を大きく軽減する
要素となります。

【関連記事】開業地の選定

 

医療モールで開業するメリットは?

医療モールメリット画像

医療モールでの開業が選ばれる理由は、単に「患者さんが来やすい」と
いう点だけではありません。同じ敷地内に他の医師がいるという環境
そのものが、診療の質や経営効率に良い影響を与えるからです。

ここでは、具体的にどのようなメリットが享受できるのかを深掘り
します。

 

認知スピードが早く初動の集患に有利に働く

新規開業したクリニックが地域に定着するには時間がかかります。
クリニックの立ち上がりには、認知の段階、定着の段階、役割が定まる
段階という複数の段階があるためです。

まずはこの「認知の段階」が肝心ですが、医療モールであれば、看板や
建物自体が「医療機関の集まり」として地域住民に認識されている
ため、オープン初日から一定の認知を獲得できます。

例えば、整形外科に通院している患者さんが風邪を引いた際、「いつも
の整形外科の隣にある内科に行こう」という自然な動機づけが生まれ
ます。また、モール全体で共通の看板を出したり、合同で内覧会チラシ
を配布したりすることで、1院あたりの広告宣伝費を抑えながら広範囲
にアピールすることが可能です。

この「ついで受診」や「認知の共有」は、単独開業では得られない
強力なメリットです。

 

専門外の疾患を他科へ紹介し合う診診連携が可能

専門特化した医療を提供すればするほど、専門外の症状を訴える患者
さんの対応に悩む場面が出てきます。医療モール内であれば、自院で
対応できない患者さんを即座に同じフロアの他科へ紹介することが
できます。

内科の先生であれば、めまいの患者さんを耳鼻科へ、腰痛を訴える患者
さんを整形外科へスムーズに誘導できます。これは患者さんにとって
「たらい回しにされない」という安心感に繋がり、結果としてドクター
への信頼度向上に寄与します。

逆もまた然りで、他科から自院の専門領域の患者さんが紹介されてくる
ルートも自然に確立されます。顔の見える関係で緊密な「診診連携」が
取れることは、医学的な安全性の担保にも繋がります。

 

共有スペースの活用により初期投資と家賃を最適化できる

医療モールでは、トイレなどを共用部分として設計している物件が
あります。これにより、自院の専有面積(賃料が発生するエリア)を
診察室や処置室などの「収益を生むスペース」に集中させることが
できます。

個別にトイレなどを整備する場合に比べて内装工事費を圧縮できる
ほか、毎月の賃料負担も効率化できます。また、患者さん用の駐車場も
モール全体で確保されているケースが多く、都心部や駅前であっても
車での来院を促せるという利点があります。

ご自身ですべてのインフラを用意する必要がないため、開業準備に
かかる時間やコストの削減が期待できます。

【関連記事】物件(不動産)契約のポイント

 

医療モールで開業するデメリット・注意点は?

医療モールで開業するデメリット・注意点は?画像

メリットの裏側には必ずデメリットが存在します。医療モールは
「共同体」であるがゆえに、自分一人の努力だけではコントロール
できない問題が発生する可能性があります。

契約してから後悔しないよう、事前に把握しておくべきリスクについて
解説します。

 

テナント間の人間関係や評判が経営に影響する

医療モールは「運命共同体」のような側面があります。もし同じモール
内の他のクリニックが悪評(待ち時間が異常に長い、医師の対応が悪い
など)を集めてしまうと、「あそこの医療モールは良くない」という
レッテルを貼られ、自院の評判まで巻き添えになるリスクがあります。

また、医師同士の相性も重要です。診療方針の違いや患者さんの紹介に
関するトラブル、スタッフ間の人間関係などが原因で、モール内の
雰囲気が悪くなるケースもゼロではありません。

単独開業であれば周囲を気にする必要はありませんが、医療モールでは
「隣人」との良好な関係維持に一定のエネルギーを割く必要があり
ます。

 

診療科目や看板デザインなどに制限がかかる場合がある

多くの医療モールでは、テナント構成のバランスを保つために
「一科目一医院」というルールを設けています。そのため、すでに内科
が入っているモールに、消化器内科として入居しようとすると、競合を
避けるために断られるか、専門領域の明確な棲み分けを求められること
があります。

また、建物の統一感を保つために、看板の色やサイズ、掲出場所に
厳しい規制がある場合も少なくありません。「自分のクリニックを
目立たせるために派手な看板を出したい」「診療時間を独自に夜遅く
まで設定したい」といった要望が、管理規約によって通らない可能性が
あります。経営の自由度が多少制限されることは、あらかじめ覚悟して
おく必要があります。

 

管理費や共益費が固定費として上乗せされる

家賃(賃料)以外に発生するコストにも注意が必要です。医療モール
では、共用通路の清掃、エレベーターの点検、駐車場の管理、警備
システム、共通看板のメンテナンスなどに費用がかかります。これらは
「管理費」や「共益費」として、各テナントに請求されます。

さらに、モール全体の販売促進費(合同広告など)や、調剤薬局との
連携にかかる調整コストが発生する場合もあります。賃料単体で見ると
安く見えても、これらのランニングコストを合算すると、周辺の単独
テナントよりも割高になるケースがあります。収支計画を立てる際は、
家賃だけでなくこれらを含めた総額の固定費でシミュレーションを行う
ことが不可欠です。

【関連記事】病診連携について

 

自身のスタイルに合う医療モールの種類は?

自身のスタイルに合う医療モールの種類は?画像

一口に医療モールと言っても、その立地や建物構造によって大きく
3つのタイプに分類されます。ご自身の診療科目やターゲットとする
患者層によって、選ぶべきタイプは異なります。それぞれの特徴を
以下の表と解説で整理します。

タイプ 主な立地 ターゲット層 特徴
ビル型 駅前
繁華街
通勤・通学客
近隣住民
利便性が高く、電車利用者がメイン
ヴィレッジ型 郊外
ロードサイド
ファミリー層
高齢者
駐車場完備で、戸建て感覚の独立性がある
商業施設型 ショッピングモール内 買い物客
ファミリー層
土日診療の需要が高く、集客力が圧倒的

物件紹介へのリンク

 

 

都市部の駅前や駅ビルに位置する「ビル型」

ビル型は、駅の近くや駅ビル内のフロアを医療機関で埋める形式です。
通勤や通学の途中で立ち寄りやすいため、内科、皮膚科、心療内科、
婦人科など、働く世代や学生をターゲットにした診療科に向いて
います。

限られたスペースを有効活用するため、院内はコンパクトな設計に
なることが多いですが、駅からのアクセスが抜群であるため、広告宣伝
費を抑えても認知されやすいのが強みです。ただし、テナント料は
比較的高めに設定される傾向があります。

 

郊外のロードサイドに展開する「ヴィレッジ型」

ヴィレッジ型は、広い敷地内に複数の戸建てクリニックを配置し、
共有の駐車場を設ける形式です。「医療村」とも呼ばれます。患者さん
は車で来院し、クリニックの目の前に駐車できるため、歩行が困難な
高齢者や、子供連れのファミリー層に好まれます。

整形外科、小児科、眼科などに向いており、各クリニックが独立した
建物を持っているため、ビル型に比べて設計の自由度が高いのが特徴
です。

また、戸建て開業のような外観を持ちながら、連携のメリットも享受
できるハイブリッドな形態と言えます。

 

商業施設内に併設される「ショッピングモール型」

大型スーパーやショッピングセンターの一画に設けられるタイプです。
買い物のついでに受診できるため、主婦層やファミリー層からの圧倒的
な集客力を誇ります。

ただし、商業施設の営業カレンダーに合わせる必要があるため、土日
祝日の診療を求められるケースが多くなります。また、施設の営業時間
に縛られるため、早朝や深夜の診療には不向きな場合があります。
「休みなく働いてでも多くの患者さんを診たい」というバイタリティの
ある先生や、複数医師体制でシフトを組める法人に向いている形態
です。

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失敗しない医療モール物件の選び方は?

 

メリットを最大化し、デメリットを回避するためには、物件選びの
段階で徹底的なリサーチが必要です。

不動産業者やコンサルタントから提案された情報を鵜呑みにせず、先生
ご自身の目で確認すべき重要な判断基準をお伝えします。

 

診療圏調査で競合だけでなく相乗効果も分析する

通常の開業と同様に、半径数キロ圏内の人口動態や競合クリニックの
状況を調べる「診療圏調査」は必須です。しかし、医療モールの場合は
それに加えて「相乗効果(シナジー)」の視点を持つことが重要です。

例えば、ご自身が「小児科」を開業する場合、同じモール内に
「耳鼻科」や「皮膚科」が入居予定であれば、子供の患者さんが相互に
行き来するため強いシナジーが生まれます。

一方で、患者層が全く異なる「高齢者向けのリハビリ特化型整形外科」
ばかりが集まっているモールに小児科が入っても、相乗効果は薄いかも
しれません。「誰が来るモールなのか」というコンセプトと、自院の
ターゲットが合致しているかを慎重に見極めてください。

 

先に入居しているクリニックとの親和性を確認する

もし既存の医療モールに空きテナントとして入居する場合は、すでに
入居している先生方の評判や診療スタイルを必ずリサーチして
ください。実際に現地へ足を運び、待合室の雰囲気やスタッフの対応、
患者さんの層を目で見て確認することをお勧めします。

可能であれば、管理会社を通じて先に入居している先生と面談の機会を
設けてもらうのも有効な手段です。「どのような連携を望んでいるか」
「モール全体のルールはどうなっているか」を直接聞くことで、開業後
の人間関係トラブルを未然に防ぐことができます。

良質な医療モールは、入居テナント同士のコミュニティも良好に保たれ
ています。

 

共有部分の管理状況や将来の修繕計画をチェックする

共有スペース(廊下、トイレ、エレベーターホール、駐車場など)の
清潔さは、患者さんがクリニックに対して抱く第一印象に直結します。
清掃が行き届いているか、照明が切れたままになっていないかといった
管理状況は、管理会社の質を判断するバロメーターになります。

また、長期的な視点では、将来的な大規模修繕の計画や費用の負担区分
についても契約前に確認しておくべきです。開業してから数年後に
「外壁塗装のために高額な一時金を徴収します」と言われて資金繰りに
困ることがないよう、契約書の内容、特に費用の発生条件については
専門家のチェックを受けることを強く推奨します。

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まとめ

 

この記事の要点をまとめます。

医療モールは「認知の速さ」と「診診連携」が最大の強みであり、
経営の早期安定化を目指す医師に適しています。

一方で、人間関係のトラブルや経営自由度の制限といったデメリットも
存在するため、契約内容の確認は必須です。

物件選びでは、立地条件だけでなく、入居テナントとの相乗効果や管理
体制まで含めた総合的な判断が成功の鍵を握ります。

医療モールでの開業は、先生の「理想の医療」を一人きりでなく、仲間
と共に地域へ届ける強力な手段となります。まずは気になるエリアの
物件情報を集め、実際に現地で「患者さんの流れ」を肌で感じること
から始めてみてはいかがでしょうか。

 

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