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承継開業とは?失敗しない手順とメリット・デメリットを解説

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承継開業とは?

 

そろそろ自分のクリニックを持ちたいけれど、ゼロから始めるリスクや
多額の借金に不安を感じていませんか?そのような先生にとって、
既存の医院を引き継ぐ「承継開業」は非常に魅力的な選択肢です。

しかし、メリットばかりに目を向けて安易に飛びつくと、思わぬ
トラブルに巻き込まれることもあります。この記事では、数多くの
開業支援に関わってきた立場から、承継開業の仕組みやメリット・
デメリット、そして失敗しないための具体的な手順を解説します。

読み終える頃には、先生が新規開業と承継開業のどちらを選ぶべきか、
明確な答えが見つかるはずです。

承継開業とは、引退する医師や後継者不在の医療法人から、建物・
医療機器・スタッフ・患者さんなどの経営基盤をそのまま引き継いで
開業するスタイルのことです。一般的には「医院継承」や
「クリニックM&A」とも呼ばれ、病院の開設者が高齢化している近年では
増加傾向にあります。

新規開業が「ゼロから1を作る」作業だとすれば、承継開業は
「あるものを磨き上げて10にする」作業だと言えるでしょう。
以下の表に、承継開業と新規開業の主な違いを整理しましたので、
まずは全体像を掴んでください。

比較項目 承継開業 新規開業
開業資金 比較的安価(譲渡対価による) 高額(建築費・設備費など)
患者数 初日から確保可能 ゼロからの集患が必要
スタッフ 既存スタッフを継続雇用 新規採用と教育が必要
自由度 既存の制限を受ける場合がある 設計も方針も自由自在
準備期間 案件次第だが比較的短い 1年以上かかることが多い
リスク 前院の負の遺産も引き継ぐ 経営が軌道に乗るまで不安定

 

既存医院の資産と患者を引き継ぐ

承継開業の最大の特徴は、前任の院長先生が長年築き上げてきた
「有形無形の資産」をそのまま受け継げることです。有形の資産とは、
クリニックの建物や内装、レントゲンや電子カルテなどの医療機器を
指します。

一方、無形の資産とは、地域での認知度や信頼、通院している患者さんの
カルテ情報、そして業務に習熟したスタッフのことです。これらを
セットで引き継ぐため、開業初日から「いつものクリニック」として
診療をスタートできます。

 

低リスクでスタートダッシュできる

新規開業の場合、どんなに立派な建物を建てても、患者さんが
来てくれる保証はありません。認知されるまでには数ヶ月から数年
かかり、その間は赤字経営が続くことも珍しくありません。

しかし承継開業であれば、すでに損益分岐点を超えている医院を
引き継ぐことが多いため、開業直後から黒字化を目指せます。
経営の先行きが見通しやすく、金融機関からの融資も受けやすい傾向に
あるため、経営リスクを抑えて安定したスタートダッシュを切りたい
先生には最適な方法です。

 

承継開業のメリットは?

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承継開業には、経営者としての負担を劇的に減らす多くのメリットが
あります。特に「資金」「収益」「人材」の3つの観点での恩恵は大きく、
これこそが多くの医師が承継開業を選ぶ理由となっています。
主なメリットと、それがもたらす具体的な効果を以下の表にまとめました。

メリット 具体的な効果
初期投資の抑制 内装工事や機器購入が不要なため、借入金を減らせる
収益の安定 患者基盤があるため、開業初月から売上が立つ
採用コスト削減 募集や教育の手間がなく、即戦力スタッフと働ける
期間の短縮 設計や工事期間がなく、スムーズに開業できる

 

 

初期費用を抑えられる

クリニックを新築する場合、昨今の建築費高騰もあり、内装や設備だけで
数千万円から1億円近い資金が必要になることもあります。

しかし承継開業であれば、既存の内装や医療機器をそのまま使える場合も
あるため、これらの初期投資をカットできることがあります。もちろん
譲渡対価(のれん代)は発生しますが、トータルで見れば新規開業よりも
費用を抑えられるケースも少なくありません。浮いた資金を運転資金や
将来の改装費に回せるため、財務体質が強くなります。

 

開業初月から収益が見込める

新規開業で最も苦労するのは「患者さんが来ない」という集患の悩みです。
しかし承継開業では、前院長からの紹介やカルテの引き継ぎにより、
固定患者さんがそのまま通い続けてくれる可能性が高いです。

例えば、慢性疾患の患者さんを多く抱える内科や整形外科などでは、
開業初日から安定したレセプト枚数を確保できます。これにより、
開業直後の資金繰りの不安から解放され、医療そのものに集中できる
環境が手に入ります。

 

ベテランスタッフを確保できる

昨今は医療業界も人手不足が深刻で、新規開業時のスタッフ採用は
非常に困難です。苦労して採用しても、一から教育するには膨大な時間と
労力がかかります。

その点、承継開業なら、その地域の患者さんのことやクリニックの
業務フローを熟知しているベテランスタッフを引き継ぐことができます。
先生が新しい環境に慣れていない時期でも、スタッフが
「この患者さんは〇〇さんで、いつもこのお薬です」とサポートして
くれるため、診療がスムーズに進みます。

【関連記事】開業コンセプトと経営理念の明確化

 

承継開業のデメリットは?

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メリットが多い一方で、承継開業には「他人のもの」を引き継ぐがゆえの
特有のデメリットやリスクも存在します。これらを事前に把握し、対策を
講じておかないと、開業後に「こんなはずではなかった」と後悔することに
なりかねません。注意すべきデメリットとリスクを以下の表に整理しました。

デメリット・リスク 具体的な懸念事項
設備の老朽化 故障リスクがあり、修繕費がかさむ可能性がある
方針の不一致 前院長のやり方を変えると患者やスタッフが離れる
潜在的リスク 簿外債務や未払い残業代などが隠れている恐れ
人間関係 前院長や古参スタッフとの相性が合わない場合がある

 

 

既存の設備が老朽化している

長年地域医療を支えてきた医院ほど、建物や医療機器が古くなっている
ケースが多いです。見た目の古さはリフォームで解消できても、配管や
空調、レントゲン機器などの見えない部分で老朽化が進んでいることが
あります。

引き継いですぐに高額な医療機器が故障したり、雨漏りが発生したり
すれば、想定外の出費となります。譲渡を受ける前に、どの設備があと
何年使えるのか、更新にいくらかかるのかを厳しくチェックする必要が
あります。

 

前院長の診療方針が壁になる

患者さんやスタッフは、前院長のやり方に慣れ親しんでいます。そこに
新しい先生が来て、いきなり診療方針やシステムをガラリと変えてしまうと、
反発を招く恐れがあります。「前の先生はもっと話を聞いてくれた」
「前のやり方のほうが楽だった」といった不満が出て、患者離れや
スタッフの退職につながることもあります。

自分の理想とする医療スタイルがあっても、最初のうちは既存の方針を
尊重し、時間をかけて徐々に自分色に変えていく忍耐強さが求められます。

 

簿外債務などのリスクがある

これは法人のM&Aなどで特に注意が必要な点ですが、決算書には載っていない
「隠れた借金」やトラブルを引き継いでしまうリスクです。

例えば、スタッフへの未払い残業代、リース契約の残債、患者さんとの
係争トラブルなどが後から発覚することがあります。これらは
「デューデリジェンス(買収監査)」と呼ばれる専門的な調査を
行わないと発見できません。安易に契約せず、専門家を入れてリスクを
洗い出すプロセスが不可欠です。

 

承継開業に必要な資金は?

 

「承継開業は安い」と言われますが、具体的にどのような費用が
かかるのでしょうか。新規開業とは異なる費用の内訳を理解し、
適切な資金計画を立てることが重要です。ここでは、承継開業特有の
コスト構造について解説します。

主な費用の内訳と目安は以下の通りです。

費用の種類 内容・目安
譲渡対価 営業権(のれん代)+資産価値。数百万円~数千万円
仲介手数料 仲介会社への報酬。譲渡価格の数%または固定額
改装・設備費 クロス張り替え、電子カルテ導入、看板変更など
運転資金 当面の給与支払いや薬品購入費など

 

譲渡対価などの初期費用がかかる

承継開業では、前院長に対して「譲渡対価」を支払います。これは、
建物や機器の現在の価値(時価)に、「のれん代(営業権)」を
上乗せした金額です。

のれん代とは、その医院が持つ収益力やブランド価値のことで、
一般的には年間利益の1〜3年分程度で算出されます。人気のあるエリアや
収益性の高いクリニックほど、この譲渡対価は高額になります。
提示された金額が適正かどうかは、専門家による算定評価
(バリュエーション)を参考にして判断します。

 

改装費や設備更新費が発生する

そのまま診療ができる状態であっても、看板の変更や診察券の作り直しは
最低限必要です。また、先生の使いやすいように診察室のレイアウトを
変えたり、待合室を明るい雰囲気にリフォームしたりする費用も考慮すべきです。

さらに、電子カルテを新規導入する場合や、古いエコーを買い替える場合
などは、数百万円単位の出費となります。譲渡対価だけでなく、こうした
「開業後に自分の城にするための費用」も予算に組み込んでおく必要が
あります。

 

運転資金の準備も必要になる

収益が早期に見込めるとはいえ、診療報酬(レセプト)が入金されるのは
診療の2ヶ月後です。その間もスタッフの給与や家賃、医薬品の支払いは
発生します。また、院長交代のタイミングで一時的に患者さんが減る
可能性もゼロではありません。

資金ショートを起こさないよう、最低でも月商の3〜6ヶ月分程度の
運転資金は手元に確保しておくべきです。金融機関への融資相談でも、
この運転資金を含めた余裕のある計画を提示することが大切です。

【関連記事】資金調達

 

承継開業の具体的な流れは?

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承継開業は、相手がいる取引であるため、新規開業とは全く異なる
ステップで進みます。個人クリニックか法人かでも期間が大きく異なり
ますが、良い案件に出会ってから最終契約に至るまで、個人クリニックの
場合、通常は半年から1年程度の期間がかかります。
スムーズに進めるための標準的なフローを見ていきましょう。

各ステップの概要とやるべきことは以下の表の通りです。

ステップ 内容 期間目安
1. 検討・探索 希望条件の整理、物件の問い合わせ 1〜3ヶ月
2. 面談・交渉 面談、条件交渉、基本合意 1〜2ヶ月
3. 監査・契約 買収監査(DD)、最終譲渡契約 1〜2ヶ月
4. 引き継ぎ 行政手続き、スタッフ面談、引き継ぎ診療 1〜3ヶ月

 

希望条件を整理し案件を探す

まずは、自分がどのようなクリニックをやりたいのか、希望条件を
明確にします。診療科目はもちろん、エリア、開業時期、予算規模などを
書き出しましょう。その上で、医院承継を扱う仲介会社や地域の医師会、
金融機関などに相談し、案件情報を収集します。

承継案件は水面下で動くことが多いため、インターネット上の情報だけでなく、
専門のエージェントに登録して非公開情報を紹介してもらうのが近道です。

物件紹介へのリンク

 

トップ面談で院長と対話する

興味のある案件が見つかったら、秘密保持契約を結んだ上で詳細な資料を
確認し、前院長との「トップ面談」を行います。これは単なる条件交渉の場
ではなく、お見合いのようなものです。前院長の診療理念や人柄、地域医療への
想いを確認し、「この先生の後なら継ぎたい」と思えるかどうかを判断します。

また、前院長側も「この先生になら自分の患者を任せられるか」を見ています。
信頼関係を築くことが、その後の交渉をスムーズにする鍵となります。

 

買収監査で経営状態を調べる

基本合意契約(MOU)を結んだら、いよいよ「買収監査
(デューデリジェンス)」を行います。税理士や公認会計士などの専門家に
依頼し、財務状況、法務リスク、人事労務の問題点などを徹底的に調査します。

ここで簿外債務や重大なリスクが見つかった場合は、譲渡価格の減額交渉を
行ったり、最悪の場合は承継を中止したりする判断も必要です。コストは
かかりますが、将来のトラブルを防ぐための保険料と考えましょう。

 

譲渡契約を結び引き継ぎを行う

監査の結果に問題がなければ、最終的な譲渡契約書を締結し、対価を
支払います。その後は開業に向けた引き継ぎ期間に入ります。行政への
開設届出などの手続きと並行して、スタッフへの説明会、患者さんへの
挨拶状送付などを行います。可能であれば、開業前の1〜2ヶ月間は
前院長と一緒に診療を行う「並走期間」を設けると安心です。

患者さんに顔を覚えてもらいながら、電子カルテの操作やクリニックの
ルールを実地で学ぶことができます。

【関連記事】開設手続き

 

失敗しないためのポイントは?

 

承継開業は成功すれば大きなメリットがありますが、失敗すると借金と
トラブルだけが残る悲惨な結果になります。数多くの事例を見てきた中で、
成功している先生が必ず実践している共通のポイントがあります。
以下の表にあるチェックポイントを、検討段階から常に意識してください。

チェック項目 対策内容
専門家の活用 契約や監査は自分だけで判断せずプロに任せる
スタッフケア 雇用継続の条件や方針説明を丁寧に行う
契約書の精査 競業避止義務や瑕疵担保責任を明記する
リスペクト 前院長や既存のやり方を尊重する姿勢を見せる

 

専門家による監査を徹底する

失敗事例の多くは、詳細な調査をせずに契約してしまったケースです。
「知り合いの先生だから大丈夫だろう」「赤字ではないから問題ない」
という思い込みは危険です。必ず医療M&Aに詳しい税理士やコンサルタントを入れ、
客観的な数値と事実に基づいて判断してください。

特に、残業代の計算方法や社会保険の加入状況などの労務リスクは、
引き継いだ後にスタッフとのトラブルに発展しやすい要注意ポイントです。

 

スタッフとの対話を重視する

承継開業の成否は、スタッフが残ってくれるかどうかにかかっています。

院長交代のタイミングは、スタッフにとっても大きな不安材料です。
「給料は下がるのか」「休みは取れるのか」「新しい先生は怖い人ではないか」
といった不安を解消するために、早めの段階で個人面談を行いましょう。
誠実な態度で接し、「皆さんの力が必要です」と伝えることで、
強力な味方になってもらえます。

 

契約内容を細部まで確認する

最終契約書には、将来のリスクを回避するための条項をしっかり
盛り込みましょう。特に重要なのが「競業避止義務」です。これは、
前院長が近くでまた別のクリニックを開業しないように制限するものです。

また、引き継ぎ後に隠れた欠陥が見つかった場合の補償
(表明保証・瑕疵担保責任)についても明確にしておく必要があります。
口約束ではなく、法的に有効な書面で残すことが、自分自身と家族を守ることに
つながります。

【関連記事】スタッフの求人・面接・採用について

 

まとめ

 

この記事の要点をまとめます。

  • 承継開業は「資産」と「患者」を引き継ぐため、低リスクで早期黒字化が狙える。
  • 初期費用や採用コストを抑えられる一方、設備老朽化や簿外債務のリスクには注意が必要。
  • 成功の鍵は、専門家による徹底した監査と、前院長・スタッフとの信頼関係構築にある。

承継開業は、医師としてのキャリアを大きく飛躍させる有効な手段です。
確かに特有の難しさはありますが、適切な手順を踏んで準備すれば、
新規開業よりもはるかに安全に、そして確実に理想の医療への第一歩を
踏み出せます。まずはご自身の希望条件を整理し、信頼できる専門家に
相談することから始めてみてはいかがでしょうか。先生の開業が、
地域医療にとっても素晴らしい未来につながることを応援しています。

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