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開業までのプロセス

開業医は儲からないと言われる理由は?年収の現実と失敗を防ぐ対策

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「開業すれば年収が倍になる」「医師免許があれば一生安泰だ」
かつてはそのように語られることが多かった開業医の世界ですが、最近では
「開業医はもう儲からない」「リスクばかりで割に合わない」という声を
耳にすることも増えてきました。これから独立を目指す先生にとって、
このようなネガティブな情報は看過できない大きな不安要素ではないでしょうか。

実際のところ、誰もが手放しで成功できる時代は確かに終わりました。
しかし、それは「医師としての技術」だけで経営が成り立っていた時代が
終わったに過ぎません。適切な戦略と経営視点を持つことで、現在でも
勤務医時代を大きく上回る収益と、理想の医療環境を実現している先生は
数多く存在します。

この記事では、なぜ今「開業医は儲からない」と言われるのか、その
構造的な背景と現実の年収事情について深く掘り下げて解説します。
また、失敗するケースに共通する原因と、厳しい環境下でも安定した
医院経営を行うための具体的な対策をお伝えします。

読み終える頃には、漠然とした不安が解消され、ご自身がこれから取るべき
具体的なアクションが明確になっているはずです。

 

 

開業医は本当に儲からないのか?

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インターネットや週刊誌などで見かける「開業医は儲からない」という言葉は、
必ずしも全ての開業医に当てはまる事実ではありません。正確に表現するならば、
成功する層と苦戦する層の「二極化」が急速に進んでいるというのが現状です。

かつては「開業すればある程度は儲かる」という中間層が厚い構造でしたが、
現在は勝ち組と負け組の差が顕著になっています。まずは、現在の開業医の
収益構造がどのようになっているのか、客観的な視点から紐解いていきます。

 

年収格差が拡大している

開業医全体の平均年収を見ると、依然として勤務医よりも高い水準を維持して
います。厚生労働省の医療経済実態調査などのデータを参照しても、開業医
(個人)の平均的な収益は勤務医の給与所得を上回ることが一般的です。
しかし、この「平均値」には注意が必要です。

一部の極めて高収益なクリニックが平均値を押し上げている一方で、経営難に
陥り、勤務医時代よりも手取りが減ってしまったケースも少なからず存在します。
つまり、平均値だけで安心することはできず、実態としては「儲かっている医師」
と「儲かっていない医師」の格差が広がっているのです。以下の表は、現代の
開業医における収益状況のイメージを整理したものです。

分類 収益イメージ 状況の特徴
上位層 年収5,000万円以上 分院展開や自由診療の導入に成功し、組織的な経営を行っている
中間層 年収2,000万円〜3,000万円 地域に定着しているが、患者数の減少やコスト増に悩み始めている
下位層 年収1,000万円以下 返済や経費の支払いに追われ、キャッシュフローが常に厳しい状態

このように、単に開業したという事実だけで高収入が約束されるわけでは
ありません。経営手腕によって、得られる果実は大きく異なるのが現実です。

参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の概要(令和7年11月26日版)」
参考:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の結果に対する見解」

 

診療科による収益差がある

儲かるかどうかの判断において、標榜する診療科目は非常に大きな要素と
なります。診療報酬の点数設定や、必要となる設備投資額、患者一人当たりの
単価が科目によって全く異なるからです。

例えば、人工透析や眼科などは、設備投資は重いものの、一定の患者数を
確保できれば高い収益性が見込める傾向にあります。一方で、内科や小児科は
初期投資を抑えやすい反面、競合が多く、薄利多売のモデルになりがちです。
また、美容皮膚科などの自由診療をメインとするクリニックは、保険診療の枠に
囚われないため青天井の収益を目指せますが、広告宣伝費がかさむリスクも
隣り合わせです。

「自分の専門だから」という理由だけで市場性を無視して開業すると、期待した
収益が得られない可能性があります。選ぶ科目によって、ビジネスモデルそのものが
違うことを認識する必要があります。

 

過去との比較で苦戦する

「儲からない」という言葉が出てくる背景には、過去の黄金時代との比較が
含まれています。昭和や平成初期の開業医は、現在ほど競合も多くなく、
診療報酬も手厚いものでした。待っていれば患者が来る時代を知っている世代から
見れば、現在の環境は「儲からなくなった」と映るでしょう。

しかし、これは他のあらゆる産業でも起きている成熟化の現象と同じです。
過去のボーナスステージと比較して悲観するのではなく、現在の市場環境に
おける適正な利益水準を理解することが大切です。

昔に比べて利益率は下がっているかもしれませんが、一般的なビジネスとして見れば、
依然として高い成功率と収益性を持つ職種であることに変わりはありません。

【関連記事】資金調達

 

なぜ儲からないと言われるようになったのか?

 

医師としての腕が良くても、経営が立ち行かなくなるケースが増えています。
これには、個人の努力だけではどうにもならない、医療業界を取り巻く構造的な
変化が関係しています。

ここでは、開業医の経営を圧迫している主な4つの外部要因について解説します。
これらを正しく理解しておくことが、リスク対策の第一歩となります。

 

競合過多で患者が分散

日本全国の診療所の数は増加傾向にあり、コンビニエンスストアの数よりも多いと
言われて久しい状況です。都市部や駅前の好立地では、ビルの一つ一つのフロアに
異なるクリニックが入居している光景も珍しくありません。

人口は減少傾向にあるにもかかわらず、クリニックの数が増え続けているため、
必然的に一施設あたりの患者数は減少します。かつては広いエリアから患者を
集めることができましたが、現在は患者にとっての選択肢が増え、近隣の競合医院と
限られたパイ(患者数)を奪い合う構図になっています。

特に、差別化が難しい一般的な内科や歯科などでは、この競争激化の影響を
ダイレクトに受けやすくなっています。患者に「選ばれる理由」がなければ、
開院しても待合室が閑散とする事態になりかねません。

 

診療報酬の実質的な引き下げ

過去には国の財政難や社会保障費の増大を背景に診療報酬が抑制されてきた時期も
ありましたが、直近では物価高や人件費高騰への対応として、2024年度は本体部分
+0.88%、2026年度は本体部分+3.09%(30年ぶりの大幅プラス)と引き上げられて
います。

しかし、医療機関の経営状況は悪化しており、これは診療報酬の引き上げ以上に
材料費・人件費などの費用が増加しているためです。2024年度の一般病院の
医業損益率は平均マイナス7.3%、経常損益率はマイナス3.9%となっています。

また、施設基準の届け出や複雑な算定要件を満たすための事務作業負担も増しており、
これに対応するための人件費やシステム投資も必要です。つまり、診療報酬の
引き上げを上回る費用増加と、それを請求するための手間の増加というダブルパンチが、
利益率を圧迫しているのです。

参考:厚生労働省「令和6年度の診療報酬改定」

 

開業初期費用の高騰化

クリニックを開業するために必要なイニシャルコスト(初期投資)は、年々上昇して
います。主な要因としては、建築資材の高騰による内装工事費の値上がりと、高度
医療機器の価格上昇が挙げられます。

かつては数千万円で開業できた規模のクリニックでも、現在では1億円近い資金が
必要になるケースも珍しくありません。以下の表は、開業時にかかる主なコスト要因の
変化を示したものです。

コスト項目 傾向と背景
建築・内装費 資材価格の高騰や人手不足による人件費増で大幅に上昇
医療機器 デジタル化・高機能化が進み、導入コストや保守費用が増加
採用費 人材紹介会社への紹介手数料が高騰(年収の20〜30%など)

初期投資が大きくなれば、毎月の融資返済額も大きくなります。損益分岐点が
高くなるため、経営の安全圏に達するまでのハードルが上がり、開業直後の
資金繰りを苦しくさせています。

 

採用難と人件費の上昇

「ヒト」の問題も経営を直撃しています。看護師や医療事務スタッフの採用難は
深刻で、募集をかけてもなかなか応募が来ない、あるいは採用してもすぐに
辞めてしまうという悩みを抱える院長は少なくありません。

人材を確保するためには、地域の相場よりも高い給与を提示する必要があります。
また、最低賃金の引き上げに伴い、パートスタッフの時給も上昇傾向にあります。
さらに、人材紹介会社を利用すれば高額な紹介手数料が発生します。

収益が伸び悩む中で固定費である人件費が膨らめば、当然ながら院長の手元に残る
利益は削られます。スタッフマネジメントの難しさに疲れ果て、閉院を考える医師も
いるほど、深刻な課題となっています。

【関連記事】スタッフの求人・面接・採用について

 

経営が苦しくなる医師の特徴とは?

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外部環境が厳しい中でも、順調に利益を出し続けるクリニックは存在します。
一方で、あっという間に経営難に陥ってしまうクリニックもあります。その違いは
どこにあるのでしょうか。

失敗する医師には、いくつかの共通した思考や行動のパターンが見られます。
ここでは反面教師とすべき3つの特徴について解説します。

 

どんぶり勘定で浪費する

勤務医時代はお金の管理を病院事務や税金天引きに任せておけましたが、開業医は
経営者として資金繰りを全て把握する必要があります。しかし、この意識の切り替えが
できず、勤務医感覚のまま「入ってきたお金」を使ってしまう医師がいます。

売上は全て利益ではありません。そこから家賃、人件費、リース料、医薬品代、
そして税金を支払わなければなりません。特に消費税や予定納税の支払いは忘れた頃に
やってきます。手元のキャッシュが潤沢にあると錯覚して高級車を購入したり、
過度な接待交際費を使ったりすれば、納税時期に資金ショートを起こします。

数字に弱い、あるいは数字を見るのを嫌がる院長は、知らぬ間に赤字体質を
作り上げていることが多く、気づいた時には手遅れになっているケースがあります。

 

職人気質で経営を軽視

「良い医療を提供していれば、患者は自然と集まる」という考え方は、医療者としての
矜持としては正しいですが、経営戦略としては危険です。現代の患者は、医療の質だけでなく、
接遇、待ち時間、予約のしやすさ、院内の清潔感など、トータルの「患者体験」で
クリニックを評価します。

職人気質の医師は、最新の医療機器やこだわりの内装には投資しますが、広告宣伝や
スタッフ教育、患者サービスの向上といった「集患・定着」のための投資を渋る傾向が
あります。その結果、腕は良いのに知られていない、あるいは先生は怖くてスタッフの
愛想が悪いといった理由で、患者足が遠のいてしまいます。

医療の質と経営の質は両輪です。片方だけが優れていても、クリニックは走り続けることが
できません。

 

立地選定を誤っている

クリニック経営において、立地は成功の8割を決めると言われるほど重要です。
しかし、十分な診療圏調査を行わず、「実家に近いから」「たまたま空き物件が出たから」
「家賃が安いから」といった安易な理由で場所を決めてしまうと、挽回が困難な失敗に
繋がります。

例えば、高齢者をターゲットにするのにエレベーターのない2階以上の物件を選んだり、
ファミリー層を狙うのに駐車場の少ない場所を選んだりするのは致命的です。また、
競合となる強力なクリニックがすぐ近くにある場合、後発で参入してシェアを奪うのは
容易ではありません。

どれだけ素晴らしい医療を提供しても、患者が通いにくい場所にあれば収益化は困難です。
立地選定の甘さは、開業後のあらゆる努力を無駄にしてしまうリスクを秘めています。

【関連記事】開業地の選定

物件紹介へのリンク

 

安定して収益を上げるための対策は?

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ここまで厳しい現実をお伝えしてきましたが、これらを事前に理解し、適切な対策を
講じれば、開業は依然として魅力的なキャリアの選択肢です。

これから開業を目指す先生が、リスクを最小限に抑え、安定した収益を上げるために
実践すべき4つの具体的な対策を提示します。

 

明確なコンセプトを決める

まずは、「誰に」「どんな医療を」「どのように提供するか」というクリニックの
コンセプトを明確に言語化しましょう。これは経営の羅針盤となります。

「何でも診ます」という総合的なアプローチは、逆に言えば「何が得意かわからない」
という印象を与え、選ばれにくくなります。「働く世代のための夜間診療対応クリニック」
や「女性医師による女性のための専門外来」など、ターゲットを絞り込むことで、
その層の患者に強く刺さる訴求が可能になります。

コンセプトが決まれば、必要な設備、内装の雰囲気、スタッフの接遇方針、広告を出す
媒体なども自然と定まり、無駄なコストを抑えながら効果的な投資ができるように
なります。

 

綿密な事業計画を立てる

開業前の事業計画書は、融資を受けるための形式的な書類ではありません。
開業後の経営をシミュレーションするための最重要ツールです。

楽観的な数値ではなく、最悪のケース(患者数が想定の半分など)を想定した
厳しめの収支計画を作成してください。損益分岐点はどこか、運転資金はいつまで持つか、
返済のピークはいつかなどを数字で把握します。

以下の表は、事業計画策定時に確認すべき重要な指標の例です。これらを具体的に
算出しておくことで、経営の安全性は格段に高まります。

指標 確認すべきポイント
損益分岐点患者数  1日あたり何人の患者が来れば赤字にならないか
運転資金確保月数 収入がゼロでも医院を維持できる期間(半年分以上が理想)
広告宣伝費率 売上に対して適切な広告費をかけているか(初期は高めに設定)

 

差別化で集患力を高める

競合過多のエリアで生き残るためには、他院との差別化が不可欠です。差別化と
いっても、必ずしも奇抜なことをする必要はありません。患者の「不満」や「不便」を
解消することが最大の差別化になります。

例えば、Web予約やWeb問診を導入して待ち時間を短縮する、キャッシュレス決済に
対応する、わかりやすい説明ツールを導入するなど、利便性を高めることも立派な
差別化です。また、Googleマップの口コミ対策(MEO対策)や、スマホで見やすい
ホームページ制作など、Webマーケティングに力を入れることも現代では必須の戦略です。

「近所のクリニックではなく、あえてここに行きたい」と思わせる理由を、意図的に
作り出すことが重要です。

 

税理士等と連携し数字を見る

医師は医療のプロですが、税務や会計のプロではありません。苦手な分野は専門家に
頼るのが正解ですが、丸投げにするのとは違います。

医療業界に精通した税理士やコンサルタントをパートナーに選び、毎月の試算表
(月次決算)を必ずチェックする習慣をつけてください。数字の推移を見れば、
「来月は広告費を少し増やそう」「材料費の無駄を削減しよう」といった具体的な
経営判断が可能になります。

経営状態を可視化し、早期に異常を検知して軌道修正できる体制を整えることが、
長期的な安定経営の鍵となります。

【関連記事】開業コンセプトと経営理念の明確化

 

まとめ

 

この記事の要点をまとめます。

  • 開業医の年収は二極化が進んでおり、平均値だけを見て安心できる時代ではない
  • 患者数の分散、診療報酬の抑制、コスト増など、構造的な逆風があることを前提にする必要がある
  • 成功するためには、明確なコンセプト設計と厳しめの事業計画、そして経営数値に基づく判断が不可欠である

「開業医は儲からない」という言葉は、無策で挑めば真実になりますが、戦略を持って
挑めば覆すことができます。これまで弊社がご支援してきた先生方の中にも、経営を
軌道に乗せて法人化された方や、分院展開に至った方がいらっしゃいます。医師としての
高い志と技術を、経営という土台で支えることができれば、患者さんに貢献しながら、
ご自身の理想とする経済的基盤も築けるはずです。まずは信頼できる専門家に相談し、
実現可能なプランを練ることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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