2022年11月にスギ薬局犬山中央店の敷地内で開業した、お城のような外観が魅力のキャッスルキッズクリニック。開業して1か月あまり、「こどもたちの健やかな成長をサポート」がモットーだという院長の武内氏に、開業の経緯について話を聞いた。
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開業したドクターの声
doctor voice
武内 こどもの頃は研究者に憧れていました。父が大学病院の勤務医だった時代、勤務先の大学へ連れて行ってもらったのですが、その時に見た実験にすごく興味がわいたからです。研究者になる道も考え医学部に進学しましたが、大学生活を楽しみながら6年という時間を過ごす中で、研究者より臨床の方が自分には向いているのではないかと思うようになりました。
初期研修は、映画・ドラマ化された医療系小説のモデルにもなった長野県松本市の相澤病院で行いましたが、相澤病院は「“断らない”救急医療を実現しよう」ということを掲げているところで、基本的に患者さんを断らない、とても忙しい病院です。夜間救急などで実際にこどもたちに接しているうちに、実は自分がこども好きだということに気が付きました。また同じ頃に自分のこどもが生まれたことも影響して小児科に興味を持つようになりました。この先、何十年も医師としてやっていくのなら、やはり自分が好きで興味のある分野を目指すべきだろうと、小児科医の道に進みました。
これまで大学病院や複数の中核病院で勤務してきましたが、小児科医としてこどもたちの役に立つために、どんなスタイルが一番いいのかをずっと考えていました。勤務医時代は外来診療・病棟管理・検査など仕事内容は多岐に渡りましたし、大学院に進学して感染症の研究にも携わりました。もちろんどの仕事も研究もやりがいがありましたが、博士課程を修了して臨床に戻ったとき、自分が一番こだわっているのが外来診療だと実感したんですね。総合病院で勤務していると、外来に力を入れたいと思っていても他の業務がたくさんあり、それだけに集中することはできません。そこで開業することを考え始めました。ちょうど新型コロナウィルス感染症が広がりはじめた頃で、研究を続けにくい環境もありました。
開業してまだ1か月ですが、理想としているのは「気軽に受診できる」「何でも相談しやすいクリニック」です。地域の方が「ここなら」と安心して来院してくださることを目指しています。クリニックでできる検査は限られていますが、適切なタイミングできちんと判断して総合病院に繋げられるよう、レントゲン・エコー・血球計数装置・CRP測定器・心電計に加えNObreathや耳鏡も導入しています。
こどもたちに楽しんでもらえるように、お城をモチーフにした外観、くぐって遊べるヒューム管やトリックアートも取り入れていますが、親御さんの居心地も考えて意外とシックな色合いでカフェのような雰囲気になっています(自分が作りたいものという事もありますが)。SNSやインターネットで海外の施設の例も探して、「こういうのはどうだろう」と設計士さんに提案し、外観だけでなく、クリニックの内部にも面白い仕掛けを施しています。
患者さんと接するにあたって心がけているのは、気持ちをきちんと汲み取ること。発熱など何かしら辛い症状があるから受診されているのですが、ほとんどの場合、小さいおこさんはご自分で症状を伝えることが困難です。したがって、どのような不調があってクリニックに足を運んでくださったのかを、付き添いの保護者の方も含め、患者さんの気持ちに寄り添って理解するように努めています。ここでこだわりのポイントをもう一つ。電子カルテではなく紙カルテをデータ化していくシステムを導入しました。やはりモニターではなく、患者さん・親御さんの方を向いて耳を傾けるのはとても大切だと思います。診察のスピードも上がりますから、辛い症状のあるお子さんや親御さんがなるべく早くご自宅に戻って休んでいただけるという利点もあります。
▲こどもたちが快適に過ごせるよう配慮されたクリニック内部。スマートディスプレイを設置した待合室、優しい色調の診察室、トイレや洗面所もこどもに合わせた設計になっている。
武内 犬山市には、祖父と父が開院していたクリニックがありましたが、私が大学院に在学中に閉院しています。建物が老朽化していて建て替えが必要だったこと、また小児科をメインにすると苦戦しそうな地域だったこともあり、継承ではなく、新しい場所を探した方がいいという結論になりました。
開業する場所を探すにあたり最初に行ったのは、医療系のサイトへの開業希望の登録です。それだけでいろいろなところから電話がありました。自宅を建てる時だったので、ハウスメーカーからも土地の紹介がありましたね。電話がかかってきた順番に各社の担当者にお会いしました。そんな中で、知り合いの先生がスギ薬局の敷地内で開院されると聞いて、そのような方法もあるんだと思ってDCPソリューションにアプローチをしました。
場所選びで一番重視したのは、自分に馴染みがあるエリアであることでした。小児科は急性疾患が多いので診療圏調査の数字はなかなかでません。ただ、今回の物件は犬山市民であれば誰もが知る百貨店の跡地だったこと、近隣に小学校や幼稚園・塾があるので認知度が早いだろうという点、広い道路沿いで駐車場の台数も多く通院しやすい環境だったので絶対に良い場所だと思って決断しました。
もちろんスギ薬局が敷地内にあることも大きな決め手でした。小児科は院内処方のところも多いのですが、薬剤師さんが間に入ってチェックしてもらう方が自分としても安心です。また総合病院で勤務していた頃は、誰がどこで処方しているのかがわかりにくかったのですが、今は目に見えるので安心感がありますね。顔を知っていると薬剤師さんにも相談しやすいです。スギ薬局は大きなグループなので、近隣の店舗から在庫が薄い薬剤を取り寄せてくれたり、昨今は様々な制限がある中でこちらの希望する薬も確保してくれます。患者さんにしても、隣に薬局があると、わざわざ車に乗って別の場所に立ち寄らなくてもいいので楽ですよね。
あと大切なのは、コンサルタントとの相性ではないでしょうか。実はもう一つ検討していたコンサルタント会社もありましたが、そちらとは、担当の方との相性があまり合わなかったのです。やはり安心してなんでも相談できる方でないとお任せすることはできません。その点、DCPソリューションの担当者さんは、まるで母のような存在で何から何までお世話になりました。設計士さんやウェブサイトの制作はじめ、業者さんもすべて紹介してもらいました。
スタッフについては現在、事務が常勤1名含む3名、看護師は常勤1名含む6名です。最初は知り合いに声をかけていたのですが、最終的には求人誌や折り込みチラシで募集して採用しました。
集患は折り込みチラシや看板が中心です。プロモーションはDCPソリューションにノウハウを教えてもらいながら実施したのですが、来院のきっかけはチラシや知り合いからの口コミが多いですね。看板もロードサイドの目立つところに設置したので、それを見て来院される方もいます。もちろんスギ薬局に来てクリニックの名前を知った患者さんもいますし、開院前にスギ薬局でも折り込みチラシを配布してもらいました。今回は開業時のコンサルテーションもスギ薬局グループであるDCPソリューションにお願いをしていたので開業をする犬山中央店だけでなく、近隣のスギ薬局でも配布してもらえたのは大きかったですね。ウェブサイトを見てこられた方もいます。 内覧会時に診察券の発行、事前予約を受け付けたのですが、思った以上の反響で本当にびっくりでした。秋開業という事もあると思うのですが、初月から多くの患者さんに来院してもらって毎日が充実しています。
武内 開業して日が浅いのですが、アドバイスするとしたら、同じルートで(私の場合はスギ薬局のルートですが)開業された先生がいらっしゃったら話を聞いてみる事だと思います。具体的な開業準備はコンサルタントが丁寧に教えてくれますから、あまり心配することはありません。資材が予定通り到着しなかったり、制服がギリギリまで間に合わなかったりと想定外のことは何かと起こりますので、あまりヤキモキすることのないよう、心の準備をしておくといいでしょう。
まだまだ目の前のことで精一杯ですが、1日も早く、地域の方に安心して来ていただけるクリニックになるよう、努力していきます。
▲スギ薬局犬山中央店の敷地内に開業