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開業に役立つコラム

医療法人社団と医療法人の違いは?社団・財団の特徴を解説!

医療法人社団と医療法人は、別々の法人格ではありません。医療法人という大きな枠のなかに「医療法人社団」と「医療法
人財団」の2種類があり、社団はそのうちの一つです。病院名で見かける「医療法人社団○○会」の表記に戸惑う方は多いの
ですが、両者を比べるものではなく、包含関係にあると理解すると混乱が解けます。本記事では、まず社団と財団を分ける
設立の基盤を押さえ、意思決定機関や出資持分の違い、社団を選ぶメリットとデメリット、そして自院がどちらを選ぶべき
かまでを順に整理します。

この記事の要約
・医療法人は社団と財団の2種類に分かれ、社団はその一つである
・2025年(令和7年)時点で全国の医療法人は59,419件、うち社団が59,034件で99%以上を占め、財団はごく少数にとどまる
・社団は人の集まり、財団は寄附財産を基盤に設立される点が根本的な違い
・社団の最高意思決定機関は社員総会、財団は評議員会である
・診療所の法人化は社団が基本で、財団は大規模で公益性が高い場合に向く

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医療法人社団と医療法人は別物ではない

医療法人社団は、医療法人という枠組みのなかにある2つの類型のうちの一つです。「医療法人」と「医療法人社団」を並
べて違いを探すのではなく、医療法人という上位概念の下に社団と財団がある、という階層で捉えると理解が進みます。

観点 内容
医療法人の位置づけ 病院や診療所などを開設するために設立する法人
内訳となる2類型 医療法人社団と医療法人財団
社団が占める割合 全体の99%以上

 

医療法人は社団と財団に分かれる

医療法人は、病院・診療所・介護老人保健施設などを開設する目的で医療法に基づいて設立される法人です。この医療法人
は、設立の基盤によって「社団」と「財団」の2種類に区分されます。つまり社団と医療法人は対立する概念ではなく、医
療法人という大きなくくりのなかに社団と財団が並んでいる関係です。個人開業と比べると、資金調達や事業承継の面で組
織としての強みを持ちます。

 

社団が全体の99%以上を占める

実際に設立されている医療法人は、そのほとんどが社団です。厚生労働省の集計では、2025年3月末時点の医療法人5
9,419件のうち、社団が59,034件、財団はわずか385件にとどまります。割合にすると社団が99%以上を占め、財団は
1%にも届きません。開業医が法人化する際に選ぶ形態は、実務上ほぼ社団と考えて差し支えありません。

参考:厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」

 

社団・財団の表記は義務ではない

法律上、医療法人の名称に必ず含めなければならないのは「医療法人」の文字だけで(医療法第40条)、「社団」「財団
」の種別を冠することは義務ではありません。実務上は「医療法人社団○○会」「医療法人財団○○会」のように種別を入
れるのが一般的ですが、これは定款の定めによるもので、大阪など種別を入れない法人が多い地域もあり、登記上の正式名
称そのものが「医療法人○○会」となっているケースも珍しくありません。もっとも、種別が名称に書かれていなくても、
法人格としては社団か財団のどちらかに必ず属しており(医療法第39条)、第三の類型があるわけではありません。

 

社団と財団を分ける設立の基盤

社団と財団の最も根本的な違いは、何を基盤に設立されるかにあります。社団は「人」、財団は「財産」が出発点です。こ
の起点の違いが、運営のしやすさや資金の性質にまで影響します。

類型 設立の基盤 主な設立者
医療法人社団 人の集まり 医師・歯科医師など複数名
医療法人財団 寄附された財産 財産を拠出する個人・法人

 

社団は複数の人が集まり設立する

医療法人社団は、複数の人(社員)が集まって設立する法人です。ガバナンスの仕組みは、社員総会・理事会などを置く点
で株式会社に類似していますが、決定的に異なる点があります。医療法人社団の最高意思決定機関は社員総会で、各社員は
出資の有無や金額に関わらず「1人1個」の議決権を持ち、株式会社のような資本多数決(出資額・持株数に応じた議決権
)はとられません。また出資持分は社員たる地位と結合しておらず、出資をしていない社員も存在し得ます。つまり、運営
の意思決定に加わるのは「出資者」ではなく「社員」です。

参考:厚生労働省「第2章 医療法人の適正な運営に関するチェックリスト(組織・運営)」

 

財団は寄附財産をもとに設立する

医療法人財団は、個人や法人が無償で寄附・拠出した財産(拠出財産)を基盤に設立する法人です。財産そのものが法人の
土台になり、拠示した財産は法人に帰属します。財団には社団のような社員(持分)の仕組みがないため、寄附をしても出
資持分のような支配権は生じません。解散時の残余財産は設立者へは戻らず、国・地方公共団体や他の医療法人など限定さ
れた帰属先へ引き継がれます。ただしこれは持分なし社団も同様であり、財団が制度上「社団より公益性が高い」と位置づ
けられているわけではありません。設立には評議員会の設置や多額の寄附財産が必要なことから、設立のハードルは社団よ
り高くなります。

参考:厚生労働省「医療法人における透明性の確保等について」

 

意思決定機関はどう違う?

社団と財団は、法人の意思を決める最高機関の名称と性質が異なります。ここは登記や運営体制に直結するため、両者を分
ける実務的なポイントです。

類型 最高意思決定機関 必須の役員構成
医療法人社団 社員総会 理事3名以上・監事1名以上
医療法人財団 評議員会 理事・監事4名以上、評議員4名以上

 

社団は社員総会が最高機関になる

医療法人社団の最高意思決定機関は、社員総会です。ここでいう社員は従業員ではなく、株式会社の株主に近い立場を指し
ます。社員が理事や監事を選び、業務を執行する理事会と、監査を担う監事を置く構造です。理事が社員を兼ねることもで
き、理事3名以上と監事1名以上、最低4名で設立できます。株式会社に近い機関設計のため、運営のイメージがつかみやす
い形態です。

参考:第2章 医療法人の設立

 

財団は評議員会が最高機関になる

医療法人財団では、評議員会が最高意思決定機関となります。評議員会は理事の選任や解任、予算や事業計画を審議し、理
事会をチェックする役割を担います。理事と評議員の兼任はできず、理事・監事あわせて4名以上に加え、評議員も4名以
上が求められます。社団より必要な人数が多く、機関同士の牽制が強いぶん、運営の自由度は下がる傾向があります。

参考:医療法

 

出資持分あり・なしで変わること

社団と財団を語るうえで避けて通れないのが、出資持分の有無です。持分は法人解散時などに出資割合に応じて財産の払戻
しを受ける権利で、承継や相続の場面で大きな意味を持ちます。

区分 出資持分あり 出資持分なし
該当する類型 社団の一部(2007年3月以前設立) 現在新設される社団・すべての財団
新規設立 不可 可能

 

持分ありは社団だけに存在する

出資持分ありの医療法人は、社団にのみ存在します。財団はそもそも財産が法人に帰属する仕組みのため、昔から持分あり
は設立できませんでした。一方の社団は、かつて持分ありでの設立が認められていた経緯があります。両者の一番の差は、
この持分を持てるかどうかにあるといえます。持分ありの社団は解散時の残余財産を出資者に分配できる点で、資産承継上
の扱いが変わってきます。

 

2007年改正で新規は持分なしに

2007年4月の医療法改正により、出資持分ありの医療法人は新規に設立できなくなりました。非営利性の徹底と地域医療の
安定を目的とした改正で、以降に設立する社団はすべて持分なしとなります。改正前に設立された持分あり医療法人は「経
過措置型医療法人」として存続が認められており、現在も一定数が残っています。ただし国は持分なしへの移行を促してお
り、承継や相続の際には持分の扱いを早めに確認しておくと安心です。

参考:医療法改正の概要

 

医療法人社団を選ぶメリット

社団が選ばれ続けるのには、運営面と資金面の明確な理由があります。開業医が法人化を考えるとき、社団の利点は実務の
負担軽減に直結します。

 

株式会社に近く運営しやすい

医療法人社団は、株式会社に近い形態のため運営しやすい点が大きな利点です。出資者が社員総会を通じて経営に関与でき
、理事の選任や運営方針の決定を柔軟に進められます。設立件数が圧倒的に多いことから、手続きや運営の参考になる情報
も豊富です。経営に直接関わりながら意思決定のスピードを保ちたい開業医にとって、扱いやすい形態といえます。

 

資本金0円で設立できる

医療法人社団は、資本金0円でも設立できます。一般的な会社設立では資本金の準備が必要ですが、社団は出資者が医師や
歯科医師であれば資本金なしで設立が可能です。開業時の資金負担が軽くなり、手元の資金を設備投資や人材採用に回しや
すくなります。資本金が不要でも税制優遇や信用力向上といった法人化の恩恵は受けられます。

 

承継や税制で有利に働く

法人化した社団は、事業承継と税制の両面で個人開業より有利に働きます。理事長を交代することで医療機関を存続させた
まま経営を引き継げるため、承継の手続きが個人事業より進めやすくなります。所得を役員報酬として分散できるなど、税
負担の調整の幅も広がります。長期的に医院を続ける、あるいは次世代へ引き継ぐ計画があるほど、社団化の効果は大きく
なります。

【関連記事】承継開業とは?失敗しない手順とメリット・デメリットを解説|医院・クリニックの開業支援
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医療法人社団のデメリット

社団には利点が多い一方で、資金と会計の面で備えておくべき点があります。メリットだけで判断せず、運営後の負担まで
見込んでおくことが大切です。

 

基金の返還で資金流出に備える

現在新設される社団は基金拠出型が一般的で、この基金は拠出者に対して返還義務を負う資金です。ただし基金の返還は無
制限ではなく、貸借対照表上の純資産額が基金の総額を超える部分を限度に、定時社員総会の決議を経て行う必要がありま
す。さらに返還した額と同額を「代替基金」として計上し、これは取り崩せません。この仕組みにより法人財務が過度に損
なわれないよう配慮されています。とはいえ返還原資は必要になるため、あらかじめ返還を見込んだ資産管理をしておくと
安心です。

 

会計処理が複雑になりやすい

医療法人社団は、出資者へ利益を配当できないため、通常の会社とは異なる会計処理が求められます。医療法人特有の税制
や資金の扱いは複雑で、財務状況を正しく把握するには会計体制の整備が欠かせません。収支報告や税務申告の負担も増え
るため、専門知識を持つ税理士との連携が実務上ほぼ必須になります。事務負担とコストの増加は、法人化の前に織り込ん
でおきたい点です。

 

社団と財団どちらを選ぶべき?

結論として、診療所やクリニックの法人化なら社団を選ぶのが基本です。財団が向くのは、公益性の高い大規模な医療事業
に限られます。規模と目的で見分けるとわかりやすくなります。

選ぶべき類型 向いているケース
医療法人社団 診療所・クリニックの法人化、小規模でスムーズに設立したい
医療法人財団 大規模病院、公益性を重視する医療事業

 

診療所の法人化は社団が基本になる

一般的な診療所やクリニックの法人化では、社団を選ぶのが基本です。社団は最低4名で設立でき、資本金も不要なため、
設立のハードルが低く抑えられます。出資者が運営に直接関われる柔軟さもあり、個人経営から法人へ移行する流れに無理
なくつながります。全国の医療法人の大半が社団である事実も、この選択の妥当性を裏づけています。

参考:医療法人運営管理指導要綱

 

財団向きなのは公益性が高い場合

財団が適するのは、公益性を重視する大規模な医療事業を目指す場合です。財団は理事・監事に加えて評議員も必要で、最
低8名程度の体制が求められ、運営資金も寄附などでまかなう必要があります。設立のハードルは高いものの、財産の安定
性が高く、社会的な信頼を得やすい形態です。個人資金での運営が難しい大規模病院や、公益的な活動を前面に出す事業に
向いています。

参考:医療法

 

まとめ

医療法人社団と医療法人は別物ではなく、医療法人という枠のなかにある社団と財団のうち、社団が一つの類型です。両者
は人か財産かという設立基盤で分かれ、社員総会か評議員会かという意思決定機関、出資持分を持てるかどうかで性質が異
なります。診療所やクリニックの法人化であれば、設立のしやすさと運営の柔軟さから社団を選ぶのが基本となります。

もっとも、社団化には基金返還への備えや複雑な会計処理など、設立前に見込んでおくべき負担もあります。法人形態の選
択は、承継や税制、開業後の資金計画まで含めて総合的に判断する場面です。物件選びから資金計画、開業後の運営まで一
体で検討したい場合は、専門家の伴走があると判断の精度が上がります。

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