理念実現のために選んだ在宅+外来診療
当初から、当院の理念「一. 本当に困っている方の力になる 一. 誠心誠意の対応を心掛ける 一. 患者さんの病気だけでなく、人生に寄り添う気概をもつ」を実現し、経験と能力を地域の役に立てるには、在宅医療を主軸にするのが良いのではと考えていました。とはいえ在宅医療専門というのは、地域を診るクリニックとしてはあまり良くない形だと思います。近くにクリニックがあるのに、来てもらっても診られませんというのは、高血圧を見てほしいとか、がんで通院しているけれど細々したことは近くで対応してほしいと思っている近所の方に門戸を閉ざすことになってしまいます。それでは地域を診ていると胸を張って言えません。そこで現状はマンパワーの問題もあり週3回のみですが外来診療も行っています。
外来では小さな子供から高齢者まで、難病も含めさまざまな疾患の患者さんを診ています。中には将来の在宅医療を見越して当院をかかりつけにしてくださる方もいらっしゃいます。
在宅と外来の患者さんの件数ですが、在宅は担当医師の午前、午後などの1枠で5件前後、外来は予約制で1人当たりの時間もかけているので、午前中だけで5〜10件くらい。ただ働いている時間の感覚では、在宅8:外来2という感じでしょうか。
開業場所を大山崎町に決めたのは、自分自身10年近く住んでみて、周りの高齢者から往診、訪問診療、家での看取りがこのエリアでは難しいという悩みを実際に聞いていたからです。自分の体感として訪問診療のニーズがあることはわかっていましたし、ここはとても交通の便が良いことも在宅医療には大きなメリットでした。
とはいうものの、実際に物件を探す時にはかなり苦労しました。コストを考えるとテナントが真っ先に候補に上がりますが、大山崎町にはクリニックに適したテナント物件がなく、市場に出ている売地も駅から離れており、雇用した際のスタッフの通勤を考えるとそれもためらわれて。そこで尽力してくださったのがスギ薬局グループのクリニック開業支援会社、DCPソリューションのコンサルタントの方です。JR、阪急各駅に近く、また高速道路大山崎インターにも近い立地を理想としていた中で、大山崎町内をコンサルタントの方が自ら歩き回って場所を探し、一般には公開されていなかった空き地を探し当て、地主交渉を行い、私との引き合わせを実現してくださいました。その時に町や訪問診療への思いを率直に話したところ、土地の利用を快諾いただくことができました。
事業計画作成にあたっても、コンサルタントの方にかなり助けていただきました。在宅医療に力点を置く開業の場合、徒歩圏内の患者さんがどれくらい見込めるかという診察圏の調査に意味はありません。大切なのは、診療圏内の地域ニーズと、医師がどんな患者さんを診られるかです。当院の場合、在宅での腹水穿刺、認知症の症状が強く大変な患者さんなど、他ではなかなか対応困難な在宅患者さんまで診られることと、地域や在宅医療にかける思いなどが伝わって、融資を申し込んだ3つの金融機関全てから審査可決がもらえました。
訪問診療と外来を両立させるには建物にもある程度の広さが必要です。1階には診察室と院内感染防止のために外から出入りできる予診室、処置室や点滴室、車椅子対応のトイレを設けています。訪問診療でも使用できるエコー、心電図、レントゲンなど準備しました。
補助診断ではございますが、なかなか病院に行って検査を受けられない方には喜んでいただいております。
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現在、在宅診療は8km圏内に対応。 往診用の車も4台備えている。 |
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持ち運びができるレントゲンは訪問診療で活躍。
2階は全てスタッフのための設備となっていて、事務室のほか、卓球台としても使用できるワークテーブルを備えたスタッフルーム、テラス、2つの仮眠室、男女別トイレ、ロッカーなどを設け、健康増進の運動、勉強会なども行なっています。このようにスタッフのための設備を充実させたのには理由があります。私も実際に経験しましたが、心のゆとりがないと患者さんやご家族に笑顔で対応できないと思いませんか?職場環境を整えたのはそれが理由です。 |
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医師、看護師、事務スタッフが全員同じ部屋で仕事をするため 情報共有もスムーズ。
窓の外はテラスになっており、天気の良い日はここでランチを食べることも |
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卓球台にもなる大きなテーブルを備えたスタッフルームは 広々としていて居心地が良い。
2つの仮眠室、男女別トイレ、キッチン、冷蔵庫、更衣室も備わる |
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診察室の椅子は医師も患者も同じもの。 ベッドも高齢者や子供が使いやすい低めのものを選んでいる。 |
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発熱者用の感染室には外から直接出入り可能。 一般患者さんと完全分離できている。 |